「私は魔女、魔女なのよ」
と彼女は言った。
両手を広げくるくると回る彼女の背景に
はらりはらりと雪が舞う。
まるでさっきの彼女の言葉を誇張しているかのように。
そんな今日はクリスマスイヴだった。
どこに行くわけでもないけど
なんだか少しだけ何かが起こる気がしている。
でもきっと何も起こらない事は知っている。
サンタは来ない。
そんな僕の隣には魔女。
テーブルの上に置いてあるクリスマスケーキを見つめ少し微笑みケーキを頬張った。
明日は何か起こるかもしれない。
でも何も起こらないかもしれない。
彼女はこちらを向き、「私は魔女だから」と繰り返した。
口の周りに少し生クリームが付いてるのが気になったが
まぁいづれ気がつくだろう、と思って何も言わない事にした。
明日はクリスマス。
僕の隣には魔女がいる。
サンタは来ないけど、
もしかしたら
もしかしたら
明日は何かが起こるかもしれない。
やっと口の周りに生クリームが付いている事に気がついた彼女は
「知ってたなら言ってよ!」
と腹を立てた彼女に僕はこう返事を返した。
「魔女なら気がつくかなって思って」
「まだ修業中なのよ!」
真っ赤な彼女の頬はサンタのようなあかだった。
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