真っ青に晴れわたる空の下小さく揺れる花がひとつ
田舎の砂利道
車が通れない程の狭いみち
一人の少女は足を止めた
「まぁなんて綺麗な花なの」
それが少女と小さな花の出会いだった
学校では友達の少ない彼女は花を見ると元気になり
それから彼女は毎日花に話しかけるようになった
田舎の砂利道
自転車がやっとすれちがえる程の狭いみち
一人の少年は足を止めた
「なんて綺麗な花なんだろう」
それが少年と小さな花の出会いだった
昼間から酒を飲み学校で煙草を吸っていた少年はみるみる変わり
まるで別人のように優しくなった
ある日少年と少女は恋に落ちた
小さな花が咲くあの道で
少女は言う
「私はこの花が枯れるまであなたを愛すわ」
少年は言う
「俺はこの花が枯れるまでお前を愛そう」
いつしか二人は結婚しどこか遠い土地へと行ってしまった
忘れられた場所では
今日は車が走っている
小さな花はもう
どこにも
ない